12.25
Fri
前回も設備情報管理の「保全計画の支援」というテーマのお話の中で、
「予測」のための、定量的な分析の方法のなかで、MTBFや故障率について説明
をしてきました。
MTBFや故障率の精度を少しでも上げるためには、故障モードに分類して、細か
くMTBFや故障率を計算していく手法が考えられます。
しかし、事象の発生頻度が少なくなります。
発生頻度が少ないと、次のような問題も出てきます。

稼働後3年で故障が発生した機械で、MTBFをもとに次回いつ故障が発生するか
考えるとします。
すると、故障発生時点では次回故障予測は前回故障から3年後という計算です。
しかし、そこから2年たってから公式通りにMTBFを計算すると、次回故障予測は
前回故障から5年後という計算になってしまいます。

このズレを避けるためには、常に「最新の故障時点」を基準にMTBFを計算する
方法が考えられます。
この計算であれば、データが少なくても、MTBFのズレの問題は避けられます。

一方、故障率も故障発生時点の計算を基準にしたとします。
すると、故障発生時点の故障率の方が高く算出されますので、それを今現在の
値として取り扱うには問題があるように感じられます。
実はこれは一つ前提を抜いているため、計算がおかしく見えるのです。

このようなお話をしてきました。

さて、この故障率の問題について考えるため、具体的な例をまた確認します。

[機器A]
・稼働開始:2010年10月1日
・今現在:2015年10月1日(5年稼働)
・故障回数:1回
・前回故障:2014年10月1日(4年稼働)

今現在を基に計算すると故障率は0.2回/年。
故障時点を基に計算すると0.25回/年となります。
つまり、今現在の方が故障率が低くなります。

「今現在の方が故障していないトータル時間が長いから、故障率が低くても当
然では?」

このように解釈できるかもしれません。

では、次のような例を考えるとどうでしょうか?

[機器B]
・稼働開始:2011年4月1日
・今現在:2015年10月1日(4.5年稼働)
・故障回数:1回
・前回故障:2015年10月1日(4.5年稼働)

つまり、今まさに故障した機械ということです。

今現在をもとに計算すると故障率は0.22回/年です。

整理すると今現在の日付で故障率を比較した場合、

[機器A]→0.2/年
[機器B]→0.22/年

このようになります。
つまり、[機器B]の方が故障率が高い、ということになります。
(故障モードがそれぞれ一種類ずつしかないという仮定ですが)

「じゃあ、Bの方が故障しやすいんですね」

さて、このように言えるでしょうか?

直感的に考えると、使い始めて4年で壊れたAの方が、4年半使えたBより故障し
そうな気がしませんか?

何か変です。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

それは、そこに、
「故障が劣化の進行等によりある程度周期的に起こる」
つまり、
「将来、必ず故障が起こる」
という前提が抜けているからです。

機器Aは使い始めてから4年で故障しています。
その前提に立ち、今後もずっと4年周期で故障する、と仮定すると、故障率は

0.25回/年になるわけです。
つまり「故障時点での故障率」で計算をするということです。

この「0.25回/年」であれば、機械Bの「0.22/年」よりも故障率が高くなっ
ていて、直観的なイメージとのズレはあまりないと思います。

逆に言うと、「将来(周期的に)故障が起こる」という前提に立てば、単純な
経過年数だけで故障率を算出するのは実態とのズレが大きくなる可能性があ
る、ということです。

この前提は、先月ご説明したMTBFでも同様です。

つまり、最新の「故障時点」までの稼働時間で計算のが、MTBF・故障率の計算
上都合が良いのです。
ここでは学術的な計算を求めているのではなく、便宜上どのように考えると比
較などの取扱いがしやすいか、ということがポイントです。

もう一つ考えてみましょう。
もし、周期が過ぎても故障が発生しなかったとしたら、故障率をどのように考
えればよいのでしょうか?

先の機器Aの例で言えば、2014年10月1日の4年後、2018年10月1日に再び故障が
発生するという前提に立っています。
しかし、それが1ヶ月過ぎても、2か月過ぎても故障が起こらないとします。

その場合、故障率の計算時点で故障が発生したと仮定して、故障率を計算して
ください。
例えば、2018年12月時点で計算するときには、12月に故障が発生したと仮定し
て、計算します。
つまり、

2018年10月まで→故障率は0.25回/年
2019年1月→故障率は0.24回/年

となります。

実際に故障が起こっていないのに故障を入れるのは違和感があるかもしれませ
ん。
しかし、この計算は「最新の故障時点を基に計算する」という前提にたってい
ます。

当初の予測を過ぎて、故障率をより実態に近づけて計算するためには、

「今故障が発生したとしたら」

と考えることで妥当性が増します。

もし、故障を仮定せず、総稼働時間で計算すると何と故障率は、

0.12回/年

となります。
この数値ではそれ以前の「0.25」という値とのギャップが大変大きくなっ
てしまいます。

故障データが少なければ、いずれにしても精度が低いのは確かです。
ただ以上のような方法を使うと、通常のMTBFの計算や故障率の計算に比べて、
計算時点での整合性ずれが少ないと思います。
比較もしやすくなります。

実は、もう一つこの件で問題があります。
つまり、予防保全を行った場合には、故障率などをどのように解釈すればよい
のか?
ということです。

長くなったので、これは次回お話ししたいと思います。
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11.06
Fri
前回は設備情報管理の「保全計画の支援」というテーマのお話の中で、「予測」
のための、具体的な定量的な分析の方法について触れました。
定量的な分析は、状況を可視化して人間の「経験や勘」を支援するこがと前提
ですが、その可視化にも役立つ技法をご紹介します。

まず、MTBF(平均故障間隔)と故障率(平均故障率)について取り上げました。
それぞれ、一般的には次のような式で表されます。

MTBF=総稼動時間÷総故障数

故障率=総故障数÷総稼動時間

MTBFを利用すると次の故障時期の目安を算出できます。
また、故障率によって保全の優先度の目安になります。

ただ、MTBFや故障率を実際に利用するには問題点もあります。
漠然と「故障」といっても、色々な部位の、色々な故障モードがあります。
それを考慮せずにMTBFを使って一括で故障時期の予測するのは無理があります。

このような話をしてきました。

今回はまず、前回の話を受けて、お話を進めます。
故障時期の予測精度を上げるため、どんな部位で、どのような故障モードなの
か、きちんと分類してMTBF等の計算をしたらどうでしょうか?

その場合、発生頻度の問題が出てきます。
つまり、該当故障モードの発生頻度が著しく低く予測の精度や整合性にブレが
生じやすいということです。

例えば、設備が稼働してから3年後に、初めて1回だけ発生した故障モードに
ついてはどのように考えればよいでしょうか?
発生した時点でのMTBFを計算すると「3年」ということになります。

「じゃあ、また3年後に故障するかもしれないですね」

とこのように考えるでしょう。

ところが、仮に稼動から5年経過した時点(つまり故障から2年後)に計算す
るとどうでしょう。
そう、「5年」ということになります。

「じゃあ、前回の故障から5年後・・・つまり、いまから3年後に故障が発生
するかもしれない!?」

このようになるのでしょうか?
最初の計算から考えると、次回の故障時期はあとわずか1年後です。

このように、MTBFや故障率を故障頻度が少ない状態で定式通り計算すると、
計算時点での不整合が大変大きくなることがあります。
故障モードによって故障を細分化すると、発生頻度が少なくなるため予測精度
に問題が出てくるのです。

少しでも予測精度高くMTBFを算出する一つの解決策は、同型の設備が複数台あ
れば、そのデータをまとめて計算するというやり方です。

しかし、

「同型の設備といっても入れた時期や、使い方に違いがあるよ」
「そもそも、1台しかないけれど・・・」

このようにおっしゃる方もいると思います。
そうなると、解決策はないのでしょうか?

予測精度はともかくとして、計算の整合性を取りながら、比較的簡単に処理す
る方法はあります。

それは、故障時点を基準に計算する方法です。
どういうことでしょうか?

MTBFや故障率を算出する際の「稼働時間」ですが、通常「総稼働時間」で計算
します。つまり、「今現在」を基準に計算を行うことが多いと思います。
実はこれが整合性が取れなくなる原因の一つです。
ですから、「故障時点」までの稼働時間で計算を行うのです。

例えばこのような感じです。

・稼働:2010年9月1日
・今現在:2015年9月1日(5年稼働)
・故障回数:2回
・前回故障:2014年9月1日(4年稼働)

このように考えます。
現時点を基に計算すると、MTBFは2.5年、故障率は0.4回/年ということ
になります。

一方、故障時点を基に計算すると、MTBFは2年、故障率は0.5回/年という
ことになります。

次回の故障予測時期を考えると、現時点を基にした場合、2017年3月にな
ります。
しかし、現時点が2016年4月1日にずれたとしたら、MTBFは2.75年、
故障予測時期は3ヶ月ずれて2017年6月になります。
この間、何も設備に処置を加えていなくても、このような計算になってしまう
のです。

一方、故障時点を基に次回の故障予測時期を考えると、2016年9月となり
ます。現時点からの時間の経過による故障予測時期のズレもありません。
では、2016年9月を過ぎても、故障が発生しない場合にはどう考えればよ
いでしょうか?
その場合、故障予測として2016年9月に起きるはずだったが、起きておら
ず、「今現在」すぐにでも故障が起こる可能性があるという解釈になります。

では、故障率についてはどうでしょう。

「故障時点の稼働時間で故障率を計算する、前回故障から現在までの故障が発
生していない期間が加味されていないから、故障率が高く出てしまうのでは?」

計算上はその通りです。

しかし、そこには一つの前提が抜けています。
それは何でしょうか?

また少し中途半端になりますが、次回ご説明したいと思います。
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10.06
Tue
前回も、設備情報管理の「保全計画の支援」というテーマのお話でした。
その中で、「予測」するために分析対象となるデータのうち「測定データ」
についてお話をしてきました。
ここで言う「測定データ」とは、点検や検針の数値データ、診断データ、監視
機器で自動収集したデータのことを指しています。

「測定データ」は主に二つの用途があり、一つ目は一定の閾値を超えていない
かを判断すること、もう一つは時系列の傾向を確認することです。
特に機械設備では、「測定データ」によって異常予測をする技法が研究されて
います。劣化の進行を「測定データ」によって見極められる可能性があります。

注意すべき点もあります。
一つは、予測ができるのはある特定の部位の特定の故障モードです。
故障一般ではありません。そのため、「測定データ」によって何が確認できる
かをはっきり理解する必要があります。

もう一つは、故障のメカニズムがはっきりしない場合の「測定データ」の取扱
いです。
これまでの経験上、「測定データ」とある故障モードとの間に何か相関があり
そうに思われることがあります。
ただ、メカニズムがわからなければ、相関関係の精度に問題があることを前提
にしなければなりません。

このようなお話をしてきました。

さて、今回から「予測」するための定量的な分析の具体的な方法について少し
触れるつもりですが、ここで「予測」の前提をもう一度確認したい思います。

定量的な分析の話は、「意識が及ばないところを可視化する」という話題から
派生しているものです。
つまり、定量的分析で「可視化する」ことが目的で、必ずしも直接「予測をす
る」ことを目的とはしていません。
「予測」に至るまでには、以下のような流れを前提にしています。

データの蓄積
   →定量的な分析
       →蓄積データの見える化(可視化)
           →担当者による予測(保全計画)の支援

以前もお話ししました通り、次の故障時期や最適な部品交換時期などを、蓄積
データから自動的に予測することは簡単ではありません。
多くの現場では蓄積できるデータ量すら限られているのです。

ですから、定量分析は人間の「経験や勘」に基づく判断を支援するために利用
することがベターだと思っています。
私共は今はこうした立場を前提として、お話を進めていきます。


それでは、具体的にはまず、保全分野でよく使われる代表的な指標について触
れたいと思います。

一つ目は、MTBF(平均故障間隔)と故障率(平均故障率)です。
MTBFとは「Mean Time Between Failure」の略称です。
一般的には

MTBF=総稼動時間÷総故障数

という式であらわされます。
(総稼働時間とは、そのまま考えると機械が稼働・運転している時間です。
しかし、利用のしやすさから計算上暦日で代替しているケースも多く、ここで
は暦日での計算のイメージで考えています。)

これは何を表しているのでしょうか?
一般論として端的に言えば、次にいつ故障しそうか、という目安を表すことに
なります。

前回故障日+MTBF=次回故障予想日

仮に、保全がすべて「事後保全」で、MTBFの数値をそのまま信用するならば、
次回予想日の計算に合わせて、保全計画(修理予算の計上)を立てるというこ
とになるでしょう。

一方、このMTBFの逆数が、故障率(平均故障率)ということになります。

故障率=総故障数÷総稼動時間

これは何を表しているのでしょうか?
これも一般論として端的に言えば、故障のしやすさを表す目安ということにな
ります。

つまり、故障率が高い機械の方が、保全計画上早めに対処したほうが良い、と
いうことになるわけです。

この二つを組み合わせると、まず、MTBFによる「次回故障予想日」にあわせて
修理予算を計上し、なおかつ、その中で優先順位をつける場合には故障率によ
って序列を判断する、こんなシナリオが出てきます。

ただ、現実にはそのようなシナリオ通りには、なかなかいきません。

なぜでしょうか?

問題点の一つ目は、「故障」の定義が明確でないことです。

例えば、

「機械の停止時間が○時間以上を「故障」と定義する」

このようにしたとします。
こうしてカウントした故障の場合、実はその故障の中に、色々なメカニズムの
別の事象が含まれているかもしれないのです。

ある故障はベアリングがすり減って発生しているのかもしれません。
一方で同じ機械で、継続的な負荷によりゆがみが生じて、機能不全を起こして
いる故障もあるかもしれません。
それらを、同じ故障と定義してMTBFを利用しても、次回どんな故障が起こるの
かという予測には、あまり意味を成しません。

それでは、どんな部位で、どのような故障モードなのか、きちんと分類して考
えたらどうでしょうか?
しかし、ここには次の問題が出てくるのです。

ちょっと中途半端なところではありますが、続きは次回とさせていただきます。
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09.07
Mon
前回も、設備情報管理の「保全計画の支援」というテーマで「予測」するため
に分析対象となるデータのうち「コストデータ」についてお話をしてきました。
コストは何度か本稿で取り上げていて、大きく二種類に分けて考えています。

・直接的コスト≒作業コスト
・間接的コスト≒損害コスト

これらのコストをできるだけ可視化することが、予測するうえで重要です。

「直接的コスト」はその内容を細かくとらえ、「材料費」、「外注費」、
「人件費(作業工数)」、「更新費」など、内訳を具体化すれば、精緻に分析
やすくなります。

一方「間接的コスト」は、実際のコストを把握しにくいものです。
そのため、「設備の重要度」、「保全ランク」、「停止時間」、
「故障(損害)規模」など代替手段を用いる方法をご提案しました。
しかし、これらの方法のいくつかは、人の主観で左右されます。
つまり、予測にブレが生じやすいということを予め念頭に置いて、基準を決め
る必要があります。

いずれにせよ、予測をするときにコストデータは欠かせないものなので、どの
ていど細かく分析するか考えておく方がよいと思われます。

このようなお話をしてきました。

今回は「測定データ」についてお話をしたいと思います。

皆様もよくご存じの通り、設備の状態を把握するために様々なデータを収集し
ています。
例えば、「電流値」「圧力」「量」「温度」「濃度」「(運転)時間」
「処理回数」「振動」「長さ」「重量」・・・。
これらのことを、ここでは「測定データ」と呼んでいます。
つまり、点検や検針の数値データ、診断データ、監視機器で自動収集したデー
タということです。

「測定データ」には主に二つの用途があります。

一つ目は、確認時点で、何らかの異常値が出ているかどうかや、一定の閾値を
超えていないかを判断することです。
値が平常時と著しく異なっていたり、閾値を超えていたりする場合には、原因
を確認したり、対処を実施したりする必要が出てきます。

もう一つは、時系列の傾向を確認することです。
継続的にデータを確認すると、値が下がったり、上がったり、周期的に変化し
たりと、一定の傾向が見える場合があります。
そうした傾向が把握できれば、設備の異常予測に役立つことがあるのです。
ここが、保全計画に結びつきます。

特に機械設備では、「測定データ」によって異常予測をする技法は様々な形で
研究されています。
一般的に設備は、使用状況に応じてその全部、もしくは一部が劣化していきま
す。
若干の劣化は設備の機能に影響を及ぼさなくても、その劣化が進むことで故障
につながります。

その劣化の進行が「測定データ」にあらわれることがあります。
例えば、皆様ご存知の通り、ベアリングの摩耗状態や配管やタンクの減肉状態
を、継続的に測定すると、劣化の進行が把握できます。
つまり、時系列のデータを主に解析することによって、いつ頃、閾値を超える
可能性があるかということが予測できることになるのです。

そうした予測ができれば、部品の交換時期の調整など、保全計画が立てやすく
なるわけです。

さて、ここで注意すべきことがあります。

それは「測定データ」によって何を予測できるのか、きちんと確認しなければ
ならない、ということです。

そもそも、こうした予測は

「予測によって故障の発生を未然に防ごう!」

という考え方が前提にあります。

しかし、こうした予測をする場合に漠然とした「故障」という考え方を対象に
するのは難しいと思われます。

「このデータを測定すれば、この機械がいつ故障するかわかりますか?」

このようなご質問にはお答えしにくいのです。

ある一つの機械でも故障にはいろんな種類があります。
ですから、ある一つのデータだけを確認すればすべての故障を把握できるわけ
ではないのです。
通常、一つの測定データで、ある特定の部位の、特定の故障モードのみが予測
の対象となると思います。

つまり、予測しようとしているのがどの部位の、どんな故障モードなのかをし
っかりと把握することがまず必要なのです。

さらに、問題があります。

故障モードが把握できても、そもそも故障の発生のメカニズムがはっきりして
いるものと、はっきりしていないものがあります。

さらに、メカニズムがはっきりしていて、測定できるデータとの相関関係も明
確なものとそうでないものがあります。
相関が明確なものは、様々なところに資料もあり、診断技術も確立されている
ものが多いので、予測が立てやすいと思います。

一方、故障のメカニズムははっきりしていないが、測定できるデータの相関関
係を推定できそうなものもあります。
例えば、自分のこれまでの経験で、データ上、一定の傾向が出てくると、特定
の故障が発生しやすい、という場合です。
これは、判断に困ります。
個人の、ある特定の印象から勘違いしている可能性もあるからです。

そのため、過去のデータを統計的に分析してある程度立証するか、少なくとも
予測の精度に問題があることを前提に、計画を組み立てていかなければなりません。

「測定データ」についての概要と、注意点は以上です。

ここまで何回かに分けて、「予測」の対象となるデータについての解析を行っ
てきましたが、次回からは具体的な予測の技法や事例についてお話ししたいと
思います。
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08.07
Fri

前回も、設備情報管理の「保全計画の支援」というテーマで「予測」するため
に分析対象となるデータは何かというお話を進めていきました。
「予測」の観点から考えて、分析対象データは

・頻度データ
・コストデータ
・測定データ

です。
頻度データは「設備に関わるある事象が何回発生したのか」、というデータで
す。
この事象には色々な内容が考えられます。
一例を挙げれば「故障」です。「故障」は、分析でよく利用される故障率、
MTBF、MTTRの計算をする場合の基礎になります。
このように、頻度データは予測のための分析の基礎になります。

頻度を取り扱う際、注意すべき点もあります。

同じような事象でも程度が違う場合にどのように取り扱うかという「レベルの
差」。
事象が稀にしか発生しない場合の「発生頻度の少なさ」。
同じ事象でも環境が著しく違う場合、どのように考慮するのかという「条件の
違い」。
同じ事象のデータを別々にカウントしてしまう「データのダブリ」。

このようなお話をさせて頂きました。


今回は、予測で取り扱うデータのうち、「コストデータ」を考えたいと思いま
す。

コストについては、これまでも何度も出てきていますが、改めて焦点を当てて
みましょう。
そもそも、「保全計画」において重点的に考えるべき要素として「コスト」
「予測」「制約条件」を挙げ、つい最近までいろいろと検討を加えてきました。

その際には、コストを2種類に分けて次のように取扱いました。

----------------------------------------------------------------
「直接的コスト」は目に見える費用、つまり、実際の保全作業にかかるコスト
ということになります。
材料費、外注費、人件費、更新費などが考えられます。

→作業コスト
----------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------
「間接的コスト」は目に見えない費用、つまり、設備トラブルが原因となり、
結果として引き起こされる現象によって発生するコストです。

→損害コスト
----------------------------------------------------------------

保全計画とはこうしたコストを、予想できる水準に管理できるかどうか、とい
うことに他なりません。
そのためには、それぞれのコストが可視化できることが必要です。

直接的コストは、上の挙げたとおり「材料費」、「外注費」、「人件費(作業
工数)」、「更新費」など、具体的な作業費を把握することで可視化できます。
もちろん、大雑把に「作業費全般」というコスト管理の方法も考えられます。
どこまで細かく分類できるかは現場ごとの事情で異なります。

ただ、細かく分類すれば、分析も細かくできて、予測の精度や、対策による効
果も高まるといってよいでしょう。

例えば、「材料費(部品費)」というデータを管理していたとします。
データを分析した結果、近年1回の作業あたりの「材料費」が上昇しているこ
とがわかったとします。
詳しく原因を探ると、特定の部品単価がだんだんと上がっていました。
もしかすると、将来的にその単価はさらに上がる可能性が高いと予測できるか
もしれません。
その分析に基づけば、該当部品の調達方法を変える、代替部品の検討を行う、
更新を早めるなどの方策を進める可能性が高くなります。

このように作業のコストを細かく区分けすれば、分析も精緻になり、将来のコ
スト予測や具体的な対策は立てやすくなります。


一方、間接的コストは少し厄介です。
以前もご紹介した通り、間接的コストを把握するのは簡単ではありません。
そのため、代替的な手段を使って間接的コストを可視化します。
具体的には、「設備の重要度」、「保全ランク」、「停止時間」、「故障(損
害)規模」などです。

ただ、「停止時間」を除いた各要素は、実は主観によって左右されます。
何をもって、重要度が高いのか、損害規模が大きいのか、客観的な基準を作る
ことは簡単ではありません。
そうなると、人によって違いが出てくる可能性がある、ということになります。

例えば、ある設備が長時間運転を停止した場合を考えてみます。
ある人はその設備が停止することで、処理工程全体が遅れることを考慮し、損
害大と判断しました。
しかし、別の人は実作業自体が単純な部品交換なのでコストが低く、損害小と
判断するかもしれません。
同じ事象でも、基準が明確でなければ、異なるデータを作ってしまう可能性が
あるのです。
そうなると、予測とその検証はうまくいかなくなってしまいます。

つまり、予測という観点から考えると、その精度を上げ実効性を高めるため、
コストの内容を区分すること、そして特に間接的コストの場合、その意味する
基準をきちんと決めておいた方が良い、ということになるのです。

もちろん、データを作成・運用する手間などがありますので、細かければ細か
いほど良い、ということにはならないとは思います。
ただ、もしも保全計画を立てるとしたら、分析の重要な対象であるコストの問
題もきちんと再検証したほうが良いと思います。


以上、予測の対象としてのコストデータについて考察を加えてきました。

次回は、「測定データ」について考えたいと思います。
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