03.09
Mon
前回は、設備情報管理による「保全計画の支援」というテーマの中で、「予測」
にスポットを当ててお話を進めてきました。
保全計画は何のために立てるのでしょうか?
将来のコスト目標と現状のコストのギャップを埋めるためです。
ギャップを埋めるためには、何らかの仮説を立てて、ある行動の結果を予測し
なければなりません。

「前年度をベースに計画を立てているから仮説なんかないよ」

という場合であっても、「前年度並の金額がかかる」という仮説をもとにして
いるはずです。
こうした仮説は「経験と勘」を基に作られることが多いと思います。
それでは仮説を立てる際に、設備情報を管理していれば何か役に立つのでしょ
うか?
データが蓄積されれば、適切な保全タイミングが予測できるのでは、と考える
方もいらっしゃると思います。
しかし私は現実的にそれは難しいと考えています。
それでは、設備情報を管理しても設備の今後を予測することには役に立たない
のでしょうか?

こうしたお話をさせて頂きました。

さて前回は、なぜデータから保全タイミングが予測できないのか、十分な説明
ができなかったので、まずその補足をします。
仮にきちんと保全・故障履歴を蓄積しても、設備の今後を予測することは本当
にできないのでしょうか?

もちろん、物理的なメカニズムの中である程度設備の損耗を予測することは可
能だと思います。
例えば、タンクや配管の減肉を測定することで、使用できなくなる時期を予測
する。音や振動の波形から摩耗状況を推定するなど、特定の故障診断のための
技術はたくさんあります。
もし機械に、継続的で多様な角度からの細かな診断を行えば、少なくとも機械
的な故障を分析し、発生時期を予測することはある程度できるかもしれません。
ですから、こうした診断データの蓄積、という意味での情報の管理は有益です。

ただ、膨大な機械に対して細かに継続診断するのは、技術的、コスト的に現実
的とは言えないと思います。

それでは、

「過去の故障履歴の蓄積によって、統計的に予測する」

このようなことは、できるのでしょうか?。

エコニティでは、以前、過去の故障履歴・保全履歴から統計的に故障予測をし、
自動的に最適な保全計画を立てることができないか、取り組んだことがありま
した。
しかし、あまりうまくいきませんでした。
最も大きな理由は、1事業所では分析するためのデータが圧倒的に足りなかっ
たことです。

例えば、ある部品の交換が遅くなると故障が発生する、という現象が予想され
るとします。
しかし、その部品が早い時期に交換され、故障が発生していなかったとしたら、
実際にいつ故障するのかはわかりません。
一方、交換頻度が過剰と判断して回数を減らし、その後故障が発生したとしま
す。

「やっぱり、交換頻度を減らしてはだめだ」

このように言えるでしょうか?
一見正しそうです。
しかし、実際に故障の発生間隔は一様であるとは限りません。
統計的に考えると、多少のばらつきがあるのが普通です。
すると、非常に稀な現象として、たまたま故障が発生したと確率もこの時点で
はまだかなり高いと言えます。
1回の故障だけで判断に足りると考えるのは早計です。
その故障が稀ではない、ということを確認するためにはもっと多くのデータが
必要です。

さらに、「適切な」交換頻度を考えようと思ったらさらに大変です。
交換頻度のパターンは無数にあります。
履歴データだけで、どこが最適な着地点か判断するとしたら、どれだけデータ
と時間がかかるでしょうか?
診断を細かく行う以上に現実的ではありません。

それでは、「過去の故障履歴の蓄積」は予測に役に立たないということでしょ
うか?

私はそうではないと思っています。

「今、データが足りないから予測は難しい、と言っていたのでは?」

確かにそうです。
しかし、それは過去の履歴データで統計的に確かな予測ができるのか、という
話です。
私は予測をするときに、履歴データを「主」として使うのではない、と思って
いるのです。
つまり、

◎履歴データを人間の「経験や勘」による予測を補完するために利用する。

これが、履歴データをうまく活用する方法ではないか、と思います。

「うちは、『経験や勘』というあいまいな要素から脱却するために、データを
使ってコンピュータで予測したいんだけど」

という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここまで書いた通り、データは多くの場合不完全です。そのデータを、
コンピュータによって処理させるのはなかなか困難です。
現時点ではむしろ人間の脳の方が、曖昧模糊とした少ないデータを判断材料と
し物事を処理するのは得意です。

ただ、データが本当に漠然としていると、当然その判断精度が落ちていきます。
だからこそ、きちんと管理されたデータで補完すれば、判断精度の向上が期待
できるのです。

具体的にはどのようなことが期待できるのでしょうか?


・説得力を増す
・記憶を助ける
・意識が及ばないところを可視化する

こうした点が挙げられます。
どういうことでしょうか?

次回ご説明したいと思います。
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