05.07
Thu
前回も、「保全計画の支援」というテーマの中で、「予測」についての話でし
た。
設備情報管理によって蓄積した、「履歴データ」は「経験や勘による予測を補
完する」ために利用ができます。
具体的なポイントは3つあります。
まず、「説得力を増す」ということです。担当者が経験上、そろそろ限界だな、
と感じた時に、

「経験上そろそろ限界です」

という話だけでは説得力が薄くなる可能性があります。
ここでもし、過去のデータによって予測が支持されれば、説得力が増します。
つまり、計画を立てる、予算をつける、このようなことがしやすくなります。

次に「記憶を助ける」ということです。
人間の記憶は、曖昧になることが多々あります。
曖昧な状態では間違いの元です。そんな時に、履歴データがあれば記憶を助け
ることができます。
記録を見ることで、その時の記憶も喚起されて、予測がより正確になります。

このようなことをお話してきました。

今回は前回もう一つ積み残した「意識が及ばないところを可視化する」
についてご説明したいと思います。

いままでご説明したのは、「自分でわかっていることを補完する」ために履歴
データが利用できますよ、ということでした。
しかし、「意識が及ばないところを可視化する」とは、その言葉通り自分で見
えにくいもの、すぐには把握できないものを履歴データによって補完しましょ
う、ということです。

実際にはどのような場面が考えられるのでしょうか?

例えば、設備のちょっとしたトラブルはよくある話です。
あまりにも日常的なのでそれほど意識しないかもしれません。
しかし、そのデータを蓄積して時系列でデータを眺めてみると、そうしたトラ
ブルの回数、トラブルによる停止時間などが徐々に増加していることがわかる
かもしれません。
もしかすると、大きな異常を内包してるのかもしれません。

また、点検や検針を行い、設備の圧力・電流などを確認することはよくありま
す。通常はそれらの値が大きく変動したり、閾値を超えていなければ、特に何
か問題を意識することはないでしょう。
しかし、これもまた時系列で値をとってみると、違った様相になるかもしれま
せん。
値が低下または上昇傾向を示していたり、ある時期に決まって通常と比べて若
干の変動があったり、このような現象が見られることがあります。
こうした内容から劣化や特殊な負荷がかかっていることを把握できることがあ
ります。

このように、過去のデータを定量的に分析すれば、何らかの異常兆候、異常に
至る傾向を見出すことができるかもしれないのです。
もちろん学術的研究と違って、値の変動と異常の因果関係を明確にすることが
目的ではありません。

「おかしいな」

こうした気付きを、まさに可視化できるかどうか、というところがポイントで
す。
おかしいと思えば、それを補強するために詳しい調査ができます。
実際に何か異常があるかどうかはともかくとして、ウォッチすべきターゲッの
ト絞り込みができます。したがって、そこに予算もつけやすくなるわけです。

定量的な分析の例は、次のようなものも考えられます。

・費用や作業時間がかかっている設備をランク化して、年度毎の変動を確認す
る。
・原因別に故障回数を集計して、時系列で原因に変動があるかを確認する。
・点検値とトラブルをプロットすることで、あるトラブルの前に点検値に特定
の傾向があるのかを確認する。
・ライン別に保全費用を比較して、同種のラインで差異があるかどうかを確認
する。

一方、定性的な意味での「可視化」もあります。

少し、施設規模が大きくなると当然一人の担当者が把握できる設備も限られま
す。
しかし履歴データがあってそれを共有していれば、自分が見ていなかった設備
の情報が確認しやすくなります。

これにより、どんなメリットが考えられるでしょうか?

・記録により、経験が少ない担当者ではわからない兆候を読み取ることができ
る可能性がある。
・同種の設備で起こった問題が、自分の担当分の設備でも起こりうるのではな
いか、という予想を立てやすくなる。

色々な現場にお伺いしていると、担当ごとに設備情報が「蛸壺」化している、
という話を聞くことが非常に多いです。
しかし、自分の知見だけでは解決がつきにくい問題は、結構多くあります。

「この設備にどのような異常が起こり得るのか?」

という予測にしても、様々な視点で考えたほうが精度が上がります。
履歴データをお互いに利用しやすい状態にしていれば、お互いに見えなかった
知見を可視化できるということなのです。

繰り返しになりますが、過去の履歴データを統計的に処理して、次の故障や、
最適な整備・部品交換時期を予測するのは、かなり難易度が高いことです。
私は、そこを突き詰めても、多くの場合コストが合わないのではないか、と思
っています。

一方、「経験や勘」による予測は

・曖昧なのではないか?
・不正確なのではないか?
・人によってばらつきがあるのではないか?

という不安も付きまといます。

だからこそ、これまで見てきたように「履歴データ」をうまく活用し、「経験
や勘」を補完することが、そうした不安を解消する手がかりになるはずです。


さて次回は、今回のお話を少し補足します。
「定量的な分析」という話が出てきましたが、履歴データを定量的に活用する
ために必要な技法について少しご紹介したいと思います。
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